待ちに待った決戦当日。きゃつらは、11時ちょうどに現れた。
親子くらい年の離れた二人組。一人は、20代前半のハナタレ小僧。もう一人は、50代半ばの七三オヤジ。
「昨日そちらさんが来られなかったのは、どういう事情ですか?」
「……」
オヤジ、キョトン。
「23日に、水曜日の『午後3時までには伺います』と、リフォーム屋さんは言ったンですけど」
「……(困惑しながら)私どもの方は、頼まれて今日ここに来ただけなので……すいません」
「このマンションの出入り業者の方じゃないんですか? 先日来たリフォーム屋さんの言い方だと、自分ンとこの会社の人間が来る、みたいな言い方でしたけど」
「ここのマンションさんとは、関係のない会社なンですけど」
「マンションさん」……なんちゅう日本語だよ、おい。だからお前は、「電気オヤジ」そう言われるンだろ!
孫請けねえ……はいはい。
誰にどうキックバックされてンだかオレの知ったこちゃねーけど、まあ、この電気オヤジが悪い訳ではなさそうだから、仕方ねえ、よしとしておくか……。
で、早速みてもらったところ──。
オレの予想通り、外の官……
「ドレン(排水)ホース内のつまり」が原因ではないか、
そう判断が下された。
電気オヤジ。友だちになれそうだな、おい。
作業は、外に出たハナタレ小僧が頑張った。電気オヤジは、冷房のスイッチを押しただけ。
流石電気オヤジ! ハナタレ小僧まで、電動で動かしてしまうとは!
エアコンの室内機を通して聞えてくる、掃除機のような音。
シュゴ……シュゴゴゴゴゴ……シュゴ……シュゴゴゴゴゴ……。
ドレンホースの排出口に「ドレンホースクリーナー」を差し込み、ゴミかなんか(なんだろ?)を吸引しながら、溜まっていた水を排水させる。この作業を、一回やっては3分くらいの間隔を置き、数回繰り返していた。
ちなみに。
この間、電気オヤジは携帯でメールをチェックしていた。
そして──。
電気オヤジの携帯が鳴った。
カーン! カーン! カーン!
「あ、すいません」
電話に出る電気オヤジ。
このオヤジ、競輪狂だァ!
いまじん。
ゼッケンのついたヘルメットを被り、競輪選手のユニフォームを着て、携帯電話で話している電気オヤジ。
その姿は、まるで異星人。
ハハハハ……。
「よかったですね!」
「はい?」
「おそらくもう大丈夫です。水がかなり流れてきた、そう言ってましたから」
……終ったのか?
「(オレをくすぐるようにエロ顔で)水が落ちてこないと、やっぱり安心でしょう?」
何を言ってンだ、この競輪屋! オレは、エアコンを見て喜びを噛みしめていた訳じゃねーから!
それから、
勝手に人の脳内劇場に飛び入り参加するな!
「6時間後、様子をみに来ますから(ニコリ)」
「よろしくお願いします」
「カーン! カーン! カーン!」と競輪オヤジの呼び出し音。
オメーは何モンだ、おい!
「あー、もしもし」
携帯で話しながら、人んちから出て行きやがった!
ふざけるな! オレんちは、欽ドンの茶の間じゃねーんだぞ!
待て! サルオ!
結局。
6時間の間、水滴は一度も落ちてこなかった。つまり、
オレのエアコンは完全復活した。
Oi! Oi! Oi! (>▽<)/
インターフォンが鳴った。は〜いと出て行くまでの間に、また「あの音」が聞えた。
競輪場に行こうかなあ……。
少しだけ、そう思った。